創部117年の歴史を大切にしながら、グローバルな視野で新たな学生柔道の歩むべき道の探索を続けます。
御陰さまで明治大学柔道部は、2015年に110周年を迎えることができました。長年にわたる明治大学の学長をはじめとする、多くの関係者の皆様のご支援とご指導に対して、深く御礼申し上げます。また、現役の学生に対するご指導のみならず、影になり日向になり、日頃、学生を支え続けて下さる明柔会の皆様に、改めて感謝申し上げます。
さて、2016年の今、明大柔道部は111年目の新たな一歩を踏み出したところです。明大柔道部は創部以来、数々の栄光に輝くすばらしい成果をあげて参りましたことは、多くの皆様にとってご周知のことかと存じます。多くの世界チャンピオンのみならず、オリンピック代表も多数、輩出して参りました。リオのオリンピックでの明大柔道部OB、海老沼選手の活躍は、記憶に新しいところです。
また、明大柔道部の学生たちは、卒業後、柔道界のみならず、産業界や行政など、国内外の多種多様な分野で活躍し、広く社会に貢献しております。
柔道のすばらしさは、試合に勝利し、優勝することだけに限られたことでは無く、柔道の根幹にある武士道精神に基づく教えの具現化にあります。私は2011年11月から柔道部長に就任し、以来、丸4年が経ちますが、武士道精神の本質を完全にマスターした訳ではありません。しかし、明大柔道部が次ぎの120周年、130周年をへて未来へと飛躍を遂げていくためには、明大柔道部の門を叩き、入部してくる学生諸君には、この武士道をしっかり具現化できる人材に育って欲しいと考えております。
つまり、心(精神)と技(知識)と体(健康)の3つをバランス良く訓練し、グローバル化した厳しい競争社会で生き抜く力を学生に身につけてもらいたいのであります。というのも、学力偏重教育は、今や受験産業と共に過熱化し、かつ少子化の影響もあって、今や多くの学生が浪人せず、現役合格で大学に進学してくる時代になりました。結果的に多くの学生が勉学の「知識」の訓練しか受けていないのです。このことは、スポーツ偏重で育ってくる柔道部の学生にも、当てはまる事実があります。多くの柔道部の学生が「技」の訓練に偏った経験しかないのです。
こうした結果、如何なる課題が発生するのかといえば、厳しい状況に直面すると心が折れたり、腐ったりしてしまう。あるいは強いプレッシャー下に置かれると体調を崩してしまう。心と技と体の3つをバランスがとれていないからです。
心(精神)の強化は、メンタル・トレーニングという新しい指導方法が既に確立されてきております。オリンピックで多数のメダルを獲得する国では、メンタル・トレーニングを専門とする多数のメンタリストが選手団に同行しているそうです。しかし、日本は心(精神)の強化が非常に遅れており、メンタリストでは無く、メンタル・ヘルスの専門家が数名、同行するだけと伺っております。
また、体(健康)の強化は、体力強化の練習だけでは実現できません。怪我をし難く、病気にかかり難い食事、規則正しい生活習慣といった当たり前のことを日々、実践することが求められます。しかし、このことが非常に難しい時代にあることも事実です。体に良くない甘味料や添加物の入った出来合の食べ物は、我々の周りにあふれています。ネット社会の普及は、夜更かし人間を増やしています。
こうした課題がある中でも、「心技体」のバランスのとれた人材の育成し、輩出することが、明大柔道部に今こそ、求められているといえます。現役の柔道部の学生諸君にとっては、文武両道はもちろんのこと、メンタルを鍛え、健康な体を作りあげるための精進を、自発的、かつ自主的に取り組むと同時に、多くの方々のご支援とご指導の御陰で今があることに感謝する気持ちを胸に刻んで稽古に励むことが、明大柔道部の長い歴史に対する恩返しになるはずです。その結果、4年後の2020年に開催される東京オリンピクの代表に現役学生と卒業生の多くが選出されるはずです。
未来に向かって明大柔道部は、必ず飛躍します。今後も変わらぬご支援、ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。